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クロトー遺伝子とは?

1997年、自治医科大学で行われていたマウスを使った実験の中で、老化のスピードが早いマウスが偶然生まれました。調べてみると、ある遺伝子が欠損していることが分かったのです。老化が早いマウスが欠損していたある遺伝子、それこそがクロトー遺伝子です。クロトー遺伝子は、「老化抑制遺伝子」の1つであり、老化の速度を抑えるものと考えられています。
寿命が約2年のマウスにおいて、クロトー遺伝子が欠損したマウスの平均寿命が約60日と短命であった一方で、クロトー遺伝子が過剰であったマウスの平均寿命は約3年と、その差が顕著に現れました。
FGF19、FGF21、FGF23といったホルモンの受容体として機能することで、リン、カルシウム、糖脂質、胆汁酸、ビタミンDなどの代謝を正しく維持するために欠かせない内分泌系を構成します。

クロトー遺伝子とは?

クロトー遺伝子の発見

1997年の自治医科大学での実験をきっかけに発見されたクロトー遺伝子ですが、その後の研究によって、さらに以下のようなことが明らかになりました。

  • クロトー遺伝子は、ホルモン受容体「FGF23」をコードしている
  • ホルモン受容体「FGF23」は、リンを摂取したときに骨から分泌するものであり、腎臓に発現する受容体クロトーに作用する。また尿中へのリン排泄を促進することで、リンの恒常性が維持される。
  • クロトー遺伝子を欠損したマウスは、リンの排泄障害のために、リン恒常性が失われていた。
  • クロトー遺伝子の欠損によって老化が早くなったマウスに、低リン食を与えることでリンの貯留を解除し治療できる。
  • ヒトの場合は、慢性腎臓病において、クロトー-FGF23内分泌系の適応および破綻が普遍的に認められる。
  • クロトー類似タンパク「βKlotho」がFGF19、FGF21といったホルモンの受容体として機能することで、摂食時および空腹時の代謝変化を促している。

このように、クロトー遺伝子の発見が、さまざまな代謝を制御する内分泌系の発見へとつながりました。
クロトー-FGF23 内分泌系は、加齢に伴いリスクが高くなる慢性腎臓病、生活習慣病、肥満、動脈硬化などの治療において、新しい治療標的となることが期待されています。

クロトー遺伝子の様々な機能

これまでに分かっている・示唆されているクロトー遺伝子の機能をご紹介します。

クロトー蛋白が老化抑制ホルモンとして機能

血中に萌出されたクロトー蛋白は、細胞内のInsulin/IGF1シグナル伝達経路を適度に抑制し、老化抑制ホルモンとして機能すると考えられています。

クロトー蛋白が細胞内シグナル伝達に関与

Insulin/IGF1シグナル伝達経路のみならず、P53/P21シグナル伝達経路を介して、細胞分裂の臼歯、アポトーシス(組織をよい状態に維持するため予めプログラムされている細胞の死)に陥ることを抑制しています。
さらに、protein kinase A&Cシグナル伝達経路にも影響しています。

カルシウム代謝、リン代謝に関与・制御している

クロトー遺伝子は、尿細管に強く現れています。Transient receptor potential V5の活性化によって、カルシウム代謝、リン代謝に関与・制御していることが分かっています。

一酸化窒素の産生を亢進させ、大血管障害を抑制

クロトー遺伝子は、一酸化窒素の産生を亢進させることから、酸化ストレスを軽減し、慢性腎疾患にしばしば認められる大血管障害の抑制が期待できます。

(クロトーの)遺伝子変異が細胞の老化に関連し
複数のタイプの精神的ストレスと相互作用する

その多くがPTSD (心的外傷後ストレス障害)を経験している米軍退役軍人309名を対象に、血液からの遺伝的・代謝的分析、MRIによる脳の構造・機能の検査、および精神状態のついての評価が行われました。
結果、PTSDの程度が重症でありクロトー遺伝子型を有する被験者の方が、そうでない被験者よりも、細胞の老化の程度が強い傾向にあることが分かりました。
また、2つの遺伝子多型(rs9527025/Rs9315202)変異が発見され、これによって老化の進行に影響が出たものと考察されます。

クロトー遺伝子と卵巣機能

採卵した卵子の周辺の顆粒膜細胞からクロトー遺伝子を抽出し(PCR法)、血中のクロトーの値を調べたところ、卵巣予備力低下群において、顆粒膜細胞内にクロトー遺伝子発現が認められ、血中のクロトー値が有意に低いという結果に至りました。顆粒膜細胞内でのクロトー発現の減少率は74%にもおよび、これは血中クロトー値で9.2年分の減少に相当することになります。
また、卵巣予備力低下群とコントロール群との体外受精の結果についても検証されています。コントロール群の顆粒膜細胞のクロトー平均値をK/S=1としたとき、受精率が卵巣予備力低下群、コントロール群ともにK/S≧1が有意に優れているという結果に至りました。
クロトーは、加齢とともに減少することが分かっています。一方で、クロトーがどのように加齢、卵巣予備力低下に作用しているのか、はっきりしたことはまだ分かっていません。ただ、クロトーの減少によって、卵胞発育、顆粒膜細胞発育、卵子成熟に関連するWnt/β-pathwayが抑制されたり、クロトーの抗酸化機能が時間とともに低下するためではないか、という指摘がなされています。

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